『機動戦士ガンダム』の小説はテレビアニメ放送当時の1979年にソノラマ文庫から刊行され、その後に角川スニーカー文庫で新たに刊行されました。この小説版、アニメ版と内容が全然違います。ということは映画版とも違うというわけです。登場人物やメカなどの名前は一緒なのですが、物語の内容や設定のみではなく、ヘタすると登場人物の性格そのものも違っていたりましす。今回はこの小説版の『機動戦士ガンダム』の中巻のストーリーPart2を紹介していきます。
目次
小説版 機動戦士ガンダムのストーリー Part2
ペガサス隊の活躍により、テキサス・ゾーンのジオン軍は一掃され、その間にレビル大将率いる連邦軍主力艦隊はグラナダを進行します。グラナダのキシリアは陽動にまんまと引っかかり、戦力を分散させすぎていました。結果、グラナダ艦隊は壊滅。最終的にキシリアは撤退を決意します。かくして連邦主力艦隊は占領したグラナダをファーストステップと改名します。しかしファーストステップは月のア・バオア・クーに面した位置にあるため、そのままでは無防備で危険だと判断され、月のその反対側にフロントバックという基地を設立し、そこに主力艦隊を再編することとなりました。
テキサスの戦いでペガサスが撃沈してしまったアムロ以外のクルーたちは、そのフロントバックに届けられていました。
クスコ・アルとの出会い
一方、宇宙を漂っていたアムロは、偶然にもサイド6の民間船に救助されクスコ・アルという女性と出会います。アムロはクスコ・アルと身の上話などをして、親しくなっていきます。ちなみにこの時、アムロの母に愛人がいたことなどを話しています。
アムロが気密保持の目的でコアファイターを破壊しようとする際もクスコ・アルは手助けするなど協力的でした。クスコ・アルになぜ手助けしてくれるかを聞くと『君が可愛いからよ』と一言。
『私もあなたもお互いに興味を持ったでしょう。だから、よ、それだけではいけなくって?』
しかしその後、クスコ・アルがジオン軍のニュータイプ研究所『フラナガン機関』のニュータイプと知って、惹かれながらも別れを告げる事になります。
ペガサス隊の再編成
アムロはサイド6の連邦領事館を経て、連邦軍に復帰し、フロントバックにて、ペガサスのクルーたちと再会します。この時アムロは歓声をあげ喜ぶなど、テレビ版より仲間たちとの絆が固くなっているようです。
レビル将軍にシャア専用ザクやエルメスを撃墜した事が評価され、彼らは新しい母船「ペガサスジュニア」と、撃破されたガンダム2号機に代わるガンダム3号機「G3」、補充された一機を含むガンキャノン2機とジム2機、さらにサラミス2隻やボール4機を含めたニュータイプ部隊「第127独立戦隊」として再編成されました。「G3」はガンダムの予備パーツとGMのパーツなどを使って改修されていて、関節にマグネットコーティング処理がされ、機動性が130%向上していました。
マダガスカル隊の編成
一方、ジオン軍もザクに変わるムサイの主砲並の火力があるビームバズーカを装備している新型モビルスーツ『リック・ドム』がロールアウトしました。シャアの部隊にもザンジバル級マダガスカル、シャア専用リックドム、そして今回シャアの部下となったシャリア・ブルと彼が搭乗するリックドム、そしてあのクスコ・アルが搭乗するエルメス2号機が配備され、厳しい訓練を続けていました。
アムロとセイラ
一方、アムロはセイラに惚れていました。セイラを口説いているうちに、セイラがシャアの妹である事を知ってしまいます。
セイラ:『兄がいるの。生き別れみたいなんだけど・・・。それでね。時々発作が起こるのよ。コンプレックスね。』『「キャスバル・ダイクン」というのが本名。私の本名はアルテイシア・ダイクン』
アムロは2人がジオン・ダイクンの遺児と聞かされ、その日セイラと一夜をともにします。
ピロートーク交じりにセイラは『シャアを・・・・殺してくれて?』とこぼしてしまい、アムロは『それを頼みたいから僕と寝たんですか!』と叫んでしまいます。兄のキャスバルに精神依存しているセイラに『アルテイシアであろうが、ジオンの忘れ形見の方であろうが、セイラさんはセイラさんでしょう』とアムロは諭します。
なお、小説版のアムロは惚れやすく、自分でもその自覚があるようです。セイラとのナニの最中にも「フラウ・ボウもこんななのかな」と結構最低な事を考えていたりします。
後にシャアもキシリアの秘書『マルガレーテ・リング。ブレア』と一夜をともにします。ララァに対して少しも感じなかった『子を産んで欲しい』という欲求が芽生えたり、小説版のアムロやシャアはアニメ版のようにララァを引きずっていないようです。
シャアの奇襲
その後、シャアのマダガスカル隊は実戦テストを兼ねフロントバックを奇襲します。この戦闘でシャリア・ブルが大活躍します。シャリア・ブルはシャアから『自分以上に優れている』と評価され、アムロも「シャア以上のニュータイプ」と感じ恐怖を憶えるほどでした。一方、クスコ・アルは初めての実戦でしたがサラミスを9隻沈め、ララァ以上のニュータイプと評されます。しかし、アムロからビームライフルで長距離狙撃され直撃。連邦に自分以上のニュータイプがいた事に自信喪失してしまいます。シャアの部隊は十分な戦火を上げたので早々に撤退します。シャアは茫然自失のクスコ・アルに『頭痛と吐き気は残ってないか?今夜は眠れそうか?』などメンタルケアをするなど、部隊の雰囲気は良好で、特にシャリア・ブルと若きニュータイプ「ルロイ・ギリアム」には素顔を晒すほど信頼を寄せていていました。
戦闘が終わり、アムロはセイラと二人きりになったタイミングを見計らい、シャアの人となりを尋ねます。
アムロ:『お兄さんのキャスバルは本当に戦争を望んでいるんですか?違うでしょ?』
セイラ:『違うわ。それは断言できる。・・・違います。』
アムロ:『となれば、ともに最強の兵・・・いえ、戦士が集まって、戦争の元凶を叩きたいと思うんです。』
シャアはアムロが想像する通り、自分より大人で戦争を望んでいない人物だとわかり、ニュータイプ同士で協力し、戦争の元凶を断つべきではないか?と言いますが、セイラはその意見に否定的でした。
コレヒドールでの戦い
いよいよ連邦艦隊は月を発して総攻撃を開始します。ドズルはグラナダを落としたのだから次は自分のいるソロモンに来るはずだ、と予想していましたが、連邦軍はソロモンを無視して直接ア・バオア・クーに向かう進路を選択します。ジオン艦隊を撃破しながら着実に前進していた第127独立戦隊でしたが、コレヒドールという暗礁区域にシャアの部隊が待ち伏せていました。この戦いが激戦となります。
クスコ・アルはララァ以上のニュータイプ能力を持ちアムロは苦戦します。サイコミュの能力とニュータイプの意識の感応によるやり取りが激しき行われます。アムロとクスコ・アルのやり取りの中、サイド6での別れ際にアムロが“クスコ・アルと寝たい”と思っていた下心が、なんとクスコ・アルにバレていた事がわかります。戦闘中に何を言っているんでしょうか、この人たちは。
クスコ・アル:『寝たかった癖に!』
アムロは羞恥心を拭うため、そんな事なかったと嘘をつきますが、簡単に嘘が見抜かれてしまいます。クスコ・アル:『私がほしいなら、そうおっしゃい。寝て上げたのに、坊や!』
子供扱いされた事に逆上したアムロはビームライフルの照準をエルメスに合わせます。そこへシャアが止めにきますが、『止めたらシャア!あなたを殺す!俺はアルテイシアに頼まれているんだ』とアムロは言い放ちます。その言葉に動揺するシャア。その隙きを突きアムロはクスコ・アルにビームライフルを撃ちます。
敵対パワーをむき出しにした為、クスコ・アルの精神は崩壊する寸前になり回避行動がとれず直撃してしまいます。その瞬間、クスコ・アルの思惟がアムロに流れ込み、彼女の今までの人生を垣間見る事になります。
それは母と“ロンドン橋落ちた”を歌い、父から“G線上のアリア”を教えてもらう幸せな記憶。そして連邦軍の兵士に父が撲殺され、クスコ・アル自信も強姦された悲しい過去。・・・アムロは自分が罪を犯したとわかりましたが、すでにクスコ・アルの身体は焼かれていました。
マイ・・フェア・・・レディ・・・クスコ・アル。
エルメスは沈み、ジオン艦隊は退却しました。マダガスカルは中破し、6機いたリック・ドムはシャア機を除くと2機だけとなりました。一方の連邦艦隊も損害がひどく、アムロの僚機のジム1機とボール4機、サラミス級「グレーデン」が沈んでしまいました。
その後、アムロはシャアに“伝えた”事をセイラに言うと、頬に平手打ちをくらうのでした。
ここで中巻が終わり、ラストとなるPart3へ続きます。
コメント