『∀ガンダム』放映当時の衝撃から大好きになってしまうまでの流れ!

サブカル

今回はガンダムシリーズの中でも割と異質な作品。支持するファンも非常に多い『∀ガンダム』について紹介します。放映当時の衝撃などを交え、この作品魅力についてお伝えします。



 

目次

∀ガンダム(ターンエーガンダム)の衝撃

『∀ガンダム』は、1999年4月から2000年4月までフジテレビ系列で全50話が1年間にわたって放送されました。20世紀最後のガンダムシリーズと放映され、2002年には『∀ガンダムI 地球光』と『∀ガンダムII 月光蝶』の2部作で劇場公開もされました。
総監督はガンダムの生みの親である御大、富野由悠季さん。それまでのガンダムシリーズは基本的に「戦争」というものを軸に、メカアクションを売りに制作されてきました。それゆえに支持していたファンも多かったと思います。しかし『∀ガンダム』は、それまでのガンダム作品とは異なり、悲惨な戦場の描写は少なめで、登場人物たちに焦点を当てて、戦いそのものよりも政治的な駆け引きのシーンが多めな作品となっています。舞台の設定もこれまでのような“あるかもしれない遠くない未来の世界”ではなく、19世紀のヨーロッパ文明をモデルにした時代設定になっていて、パッと見の絵面は、『世界名作劇場』のような雰囲気でした。産業革命のあった19世紀のヨーロッパのような世界観で、複葉機が飛ぶ時代を舞台に制作される新作ガンダム。私を含むそれまでのガンダムファンはかなり戸惑ったことを鮮明に覚えています。

 

主役機のデザイン

そして一番物議を醸し出したのは、特徴的すぎる主役機である「∀ガンダム」のデザイン。ガンダム作品となると毎回「新作はどんなにカッコいいガンダムなんだろう?」という期待があり、作品が発表されるたびに主役機のデザインは注目されていました。この時、富野監督はそれらファンの固定概念を一気に壊しにかかりました。主役機である「∀ガンダム」はなんとなくそれまでのガンダムのデザインは意識されているものの、顔にはヒゲのような突起物があり、胸も平面となっていてそれまでのガンダムとは全く違うデザインが放映前に発表されました。当時の私の感想を正直に言うと、ひと昔前に退化したデザインと感じてしまいました。まるで子供の頃にアオシマのプラモデルで展開していた『合体ロボットシリーズ』の1つのようなデザインに動揺を隠せませんでした。この「∀ガンダム」をデザインしたのは、映画『ブレードランナー』や『スタートレック』などで有名な今は亡きシド・ミード氏。失礼ながら当時の私はガンダムの事を知らない世界的なデザイナーの作品に文句を言えず、しょうがなく採用してしまったと思ってしまっていました。それぐらい、当時は「ガンダム」としてはあり得ないデザインでした。そして人物キャラクター原案には、ゲーム『ストリートファイター』などを手がけたカプコン(当時)の安田朗さんが担当。ファンの動揺をよそに、何もかもこれまでと違ったガンダム作品の放映が開始されました。

 

ざっくりストーリー

度重なる人々の争いにより、地球には人が住めない星になりつつありました。その時人類は一部の人間が地球に残り、地球を浄化させることにして、あとの人類は月へと移民して、再び地球に人が住めるようになれるまで待つ事にしました。

時は流れ、正暦2343年。月の民であるムーンレィスのロラン・セアックは、「地球帰還計画」の一環として、計画に先行して友人のフランとキースとともに地球へ降下しました。北アメリア大陸という場所に降下したロランたち3人はそれぞれ地球での生活に馴染んでいきました。ロランはハイム鉱山を持つディラン・ハイム氏のところで世話になることになり、娘のキエル・ハイムソシエ・ハイムとも親交を深めていました。
2年後、この地方で開かれる成人の儀式にソシエとともに参加していたロラン。しかし、この式典の最中に、この時代の地球文明では考えられない大型の機動兵器を持つ集団が、北アメリア大陸に降下します。彼らは地球への入植を目指してやってきた、月の軍隊「ディアナ・カウンター」でした。先遣隊のポゥ・エイジは地球の複葉戦闘機との交戦で禁じられていた大型ビームを放ってしまい、街を破壊してしまいます。儀式の場所でその様子を見ていたロランとソシエ。そこにあった「ホワイトドール」の神像がビームの攻撃に反応して突如動き出しました。ロランとソシエは神像「ホワイトドール」の中から現れた謎の機械人形(∀ガンダム)に偶然乗り込み、ビームライフルで応戦することになります。混乱に陥ってしまった自分が大好きな地球と自分の故郷との戦争を恐れたロランは、偶然手に入れてしまった「∀ガンダム」でこの混乱を乗り越えようとしますが、後にこの「∀ガンダム」の謎がまた人々を争いへと導いてしまいます。

 

そして∀ガンダムが大好きになる

複葉戦闘機とモビルスーツの戦いが始まり、圧倒的な戦力差で物語の展開を心配していましたが、地球に埋められていたのは、「∀ガンダム」だけではありませんでした。地球には「マウンテンサイクル」と呼ばれる場所がいくつかあり、地球人はこれを掘り起こしていきます。そこには「黒歴史」と呼ばれた人々の争いの時代に使用されていた機動兵器がナノマシンにより埋まっていて、地球側はこれらを使用してムーンレィスと戦っていきます。中にはかつてのガンダムシリーズに登場したモビルスーツも登場します。そしてマウンテンサイクルには、モビルスーツだけではなく、禁断の核爆弾まで埋まっていました。
やがて地球へ月の姫であるロランも崇める「ディアナ・ソレル」もやってきます。このディアナ姫がロランが地球で世話になった家の姉妹の姉キエル・ハイムと瓜二つだったりします。そしてひょんなことからこの二人が入れ替わったりもします。偶然手にいれてしまった核爆弾を「∀ガンダム」内に隠し、ディアナとキエルの二人の間で翻弄される主人公のロラン。そして次回には一体どんなモビルスーツが発掘されるんだろうと、物語はそれまでのガンダムシリーズにはない流れを見せ、また我々の予想していない角度から、メカの部分での楽しみがでてきました。この頃になるとファンを驚愕させた「∀ガンダム」のデザインなんて気にならなくなってます。と、いうか、「∀ガンダム」のことが大好きになってしまっています。月と地球、ディアナとキエル、そして核爆弾と物語が盛り上がってきた時、舞台は宇宙へと移っていきます。そして物語の舞台が月に移った時、それまで過去のシリーズとの繋がりを匂わせていた部分が一気に解明され、その内容もファンの予想の上をいくものでした。

 

ネタバレになります

ここからはややネタバレになりますので、『∀ガンダム』をこれから見ようとしている人はこの先は見ない方がより物語を楽しめると思います。

要するに『∀ガンダム』の世界は、過去に人々の争いがあって、月と地球に分かれて生活していたということなのですが、その人々の争いというものが、過去のガンダムシリーズの出来事だということはなんとなく想像ついていました。富野監督作品ということで、『∀ガンダム』は宇宙世紀のあとの世界を描いた作品なのだと誰もが思っていました。しかし、真相は少し違いました。『機動戦士ガンダム』を始めとした「宇宙世紀シリーズ」の歴史だけでなく、それぞれ独立した世界観を持つ『機動武闘伝Gガンダム』の「未来世紀」や『新機動戦記ガンダムW』の「アフターコロニー」、『機動新世紀ガンダムX』の「アフターウォー」といった富野監督が制作に携わっていない作品の歴史も全てを「黒歴史」としてまとめられていたのです。これには当時ファンは大騒ぎ。そのためか「∀ガンダム」のライバル機となる「ターンX」が「シャイニングフィンガー(Gガンダムのシャイニングガンダムの技)」を使用したりして、ファンを沸かせました。そして物語は最終的に文明を滅ぼした存在が「∀ガンダム」だということにまでたどり着き、て物語はクライマックスへと向かいます。この頃になると放送前に公開された情報や「∀ガンダム」のデザインでガタガタ言っていた自分を恥じました。この頃になると「∀ガンダム」のデザインはこれじゃなきゃダメだったくらいまで思ってしまいます。

 

視聴するならテレビ版

もし視聴するなら全50話と非常に長いストーリーになってしまいますが、テレビ版をお勧めします。劇場版の『∀ガンダムI 地球光』『∀ガンダムII 月光蝶』も面白くないわけではないのですが、やはり50話の内容を映画2本にまとめるのにはかなり無理があって、特に続き物であっても『∀ガンダムI 地球光』と『∀ガンダムII 月光蝶』の間のつながりが少しおかしかったり(ディアナとキエルの入れ替わりの状況)、見ているだけでは理解できない部分も多々あると思います。劇場版にも新作カットなどがあって、捨てがたい部分もあるのですが、ちゃんと感動を味わいたいのであれば、結末などはかわらないため、テレビ版をお勧めします。



ロランが主人公ではあるものの、ガンダム作品では珍しいディアナとキエルという二人の女性に焦点が当てられている作品。過去とのつながりに関しては、古くからのファンが喜ぶだけの部分なので、この作品が初めてのガンダムであっても問題なく視聴できると思います。

この後に制作された富野監督のガンダム作品である『Gのレコンギスタ』とこの『∀ガンダム』とでは、歴史的にどちらが前で後かという物議がいまだにファンの間ではありますが、それについてはまたの機会にでも紹介できたらと思います。

今回は以上です。

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