よく知らない人に向けた『装甲騎兵ボトムズ』への誘い テレビ編

サブカル

リアルロボットの金字塔、『機動戦士ガンダム』。もはや世代を越えた大人気シリーズとなっていて、時代を越えて新作が作り続けられています。そんな『ガンダムシリーズ』と同じくらいに有名な作品『装甲騎兵ボトムズ』という作品を聞いた事がある人もいると思います。今回はよく聞くけど、よくは知らないという人に向け、『装甲騎兵ボトムズ』という作品について紹介したいと思います。

目次

『装甲騎兵ボトムズ』とは

『機動戦士ガンダム』の人気から、リアルロボットアニメが制作されていき、その中でも高橋良輔監督の『太陽の牙ダグラム』がよりミリタリーテイストを取り込んだ作品になり、プラモデルが売れるなど好評で、最終的に全75話と当時としても異常に長いストーリーになりました。そんな期待の中、『太陽の牙ダグラム』の後番組として制作されたのがこの『装甲騎兵ボトムズ』
『太陽の牙ダグラム』以上のハードボイルドな描写とハードな世界設定とともに、登場するロボット「アーマードトルーパー(以下AT)」を単なる機械、単なる兵器として扱う描写を『ダグラム』以上に徹底して追求した作品となりました。なので当時少年の私は、『太陽の牙ダグラム』の後番組として最初に発表されたビジュアルを見た時、「え?これ主役のロボットなの?」「え?なんか大きさちっちゃくね?」など非常に戸惑いを覚えたものです。また、物語冒頭で主人公の乗るスコープドッグが、色の違う同じスコープドッグと戦って、罠にハメられ、捕まって拷問されるといった、それまで期待していたヒロイックなロボットアクションはなかなか展開されず、一時は視聴をためらうほどでした。しかし、物語が進んでいくとしこれまでのロボットアクションにはなかったローラーダッシュでの移動や、乗り降りするための降着フォーム切り替わるターレットレンズなど、“なんかすげえリアルっぽい”描写にだんだんしびれ始め、気がつけばその魅力の虜になっていきました。これまでになかったメカ描写から好評の内に放映は終了。その後もOVAとして、何作も新作がつくられていきました。そんな『ボトムズ』には、他のリアルロボット物にはない特徴がたくさんあります。

『ボトムズ』というメカはいない

タイトルである『装甲騎兵ボトムズ』の『ボトムズ』とは、機体名ではなく、AT全体のことを登場人物が呼ぶスラングのようなもの。脆弱な装甲、発火しやすいポリマーリンゲル液(ATを駆動させている液体)、コストを下げるため切り捨てられた機体の生存向上システムなどが原因で、搭乗者の生存率の低さから“鉄の棺桶”とも呼ばれていました。また搭乗パイロットたちの素行の悪さや任務環境の過酷さから付いたスラング「Bottoms:最低の奴(ら)」というのが語源。なので劇中では“ボトムズ乗り”という言葉はでてきますが、タイトルを飾った名前の主役機はでてきません。

 

主役機がない

イメージとして、よくビジュアルにでてきるのは、「スコープドッグ」だと思います。しかし、この機体はこの世界では一番量産された機体で、その一機を主人公であるキリコ・キュビーが好んで乗っているだけで、専用機でもなければ、簡単に破壊されます。物語の冒頭で、キリコはスコープドッグで登場するのですが、罠にはめられ、乗っていた機体は大破します。その後、いろいろあって、スクラップ工場のような所で匿ってもらうのですが、このスクラップから、次に乗る機体を修理して使用します。その後も破壊された後に脱出し、すぐに次のスコープドッグに乗り換えるなど、非常に雑に扱っています。また物語が進むと、敵のATを盗んでしばらく使用し続けたりもするので、主役機と呼べる機体がない珍しい作品となっています。

 

機種名はほとんど呼ばれない

例えばガンダムでは、ザクのことをザクと呼ぶし、ダンバインでは、ドラムロビランビーと敵の呼称も、自軍の機体も基本的にはその機種名で呼びますが、『ボトムズ』ではほぼすべて“AT”と呼称されています。まあ、現代の我々でいう“車”みたいな感じですね。基本的に“車”で移動するとか、“車”で迎えに来てとかそんな感じで使われています。でもこの“車”同様、人によってはたまに、それが“スカイライン”とか“プリウス”とか呼んだりします。そんな感じでごくたまに機種名を呼ぶシーンもあります。キリコが「クメン編」にて「マーシィードッグ」をゴウトに注文する時に、「使い慣れたドッグ系にしてくれ」と言った時、思わず「おぉ」と私は声をもらしてしまうくらい滅多に機種名を言いません。

仕様や装備が変わると機体名が変わる

例えばスコープドッグの湿地帯仕様はバックパック、脚部が少し変わった「マーシィドッグ」という名前になったり、格闘用に装甲を強化すると「 ストロングバックス」という名前になったり、パーフェクトソルジャー(ガンダムでいうニュータイプ)用にチューンアップした機体を「ブルーティッシュドッグ」という名前になったりと、他の作品では「〇〇カスタム」とか「〇〇用□□」で済むのを、機種名ごと変更しています。ただ、前述の通りその機種名を呼ばれることは、ほとんどありません。

テーマソングが実は織田哲郎

『ボトムズ』のオープニングテーマは「炎のさだめ」。そしてエンディングテーマ「いつもあなたが」とう曲で、特にオープニングは私にとって未だにテンションが上がる曲です。この曲を歌っているのは“TETSU”というアーティストです。実はこのTETSUの正体は、後に1990年代のヒット曲の仕掛け人となったシンガーソングライター・織田哲郎さんなのです。あの“いっつまーーでもかーわーらーぬあ〜いを♪”の織田哲郎さんです。織田さんは自身の公式サイト内の日記で読者からのメール等に応えて明らかにしたところによれば、ボトムズ放映の頃、まだデビューするかしないかの駆け出しだった彼は、アルバイトとして覆面歌手扱いで曲を吹き込むことも多かったととのこと。『ボトムズ』についても、当時お世話になっていた人の求めに応じて歌ったものらしく、織田さんが数多く担当したそうゆう事情のある歌の中でも、この曲は最も有名になったものとのことです。

世界設定と物語

物語の舞台となるのは、アストラギウス銀河というどこか遠くの銀河。ここではギルガメス軍とバララント軍の開戦の理由など、もはや誰も知らない戦争を100年も続けているところからスタートします。主人公のキリコ・キュービィーはギルガメス軍の一兵士。物語冒頭では味方の基地を強襲するという謎の作戦に参加させられてしまいます。その作戦でキリコは偶然に軍の最高機密「素体」というカプセルに眠る女性を目にしたため、その後、軍から追われる身となってしまいます。その時、目撃した「素体」とはなんなのか、なぜ自分は追われる身となるのか、その出来事を主軸に舞台を変えながら物語は進んでいきます。

大きく分けて物語は舞台となる場所から「ウド編」「クメン編」「サンサ編」「クエント編」4つ別れています。それぞれの見所や簡単なストーリーを少し紹介します。

「ウド編」

「素体」の件で追われる身となったキリコ。ちょうどその時、百年続いた戦争は終戦します。キリコは暴走族が支配する街、「ウド」に潜伏します。そこのスクラップ工場で、闇商人ゴウトと出会ったキリコは、ゴウトの商売仲間のバニラ、そしてココナに出会います。暴走族から逃れたキリコの腕に目をつけたゴウトはこの街で行われているバトリングという賭けの対象として闘技場でAT同士のバトルを行うエンターテインメントを進める。そこで実力を示したキリコの前に、あの「素体」が対戦相手としてキリコの前に現れます。
『ボトムズ』の序章となるストーリー。無口なキリコとは対象的に仲間たちが非常ににぎやか。このメンツは物語通して最後までキリコを助けてくれます。

「クメン編」

「ウド」の戦いで仲間と離れ離れになったキリコは、内乱の続くクメン王国の傭兵基地アッセンブルEX-10にたどり着き、この地で「ウド」で別れた「素体」こと「フィアナ」を探します。するとこのクメンでゴウトたちとも再会。傭兵としてしばらく戦う中、敵の中に驚異的な戦闘力を持つ青いATと出会います。この青いATこそフィアナと思ったキリコは、戦いの中、その身を晒します。それに応えるようにコクピットを開けた青いATに乗っていたのは、フィアナではない別の男性でした。
『ボトムズ』ファンには人気のエピソード。ATでの戦闘も『ウド編』に比べると比較的多めで、何よりキリコのライバルとなる「イプシロン」が登場するエピソードです。

「サンサ編」

クメン内乱の終わりに、キリコとフィアナを乗せた1機のシャトルが惑星メルキアを脱出しました。その直後、謎の戦艦Xに取り込まれてしまう二人。その中でキリコはかつてレッドショルダー部隊に所属していた時代の記憶を呼び起こされる音楽や映像で、精神的におかしくなっていきます。そんなキリコを献身的に支えるフィアナ。バララント軍と接触しながらも戦艦Xは惑星サンサにたどり着きます。そこはかつてレッド・ショルダーが蹂躙した惑星でした。
キリコとレッドショルダーの関係が印象的なエピソード。ここでキリコとイプシロンの戦いに決着がつきます。

「クエント編」

すべての謎を知るため、キリコはロッチナの言葉に従い、惑星クエントへやってきます。砂漠の惑星であるクエントで、かつてのクメンで共に戦った戦友、戦友ル・シャッコと再会します。シャッコとともにクエントを散策するキリコ。そしてこの惑星で、自分は一体何者なのか、なぜ生まれながにパーフェクトソルジャーの能力をもってるのか。やがてキリコはギルガメスやバララントのすべてを敵に回しながらも、その真相へとたどり着きます。TVシリーズ最後のエピソードです。ル・シャッコやかつての仲間も集結し、物語はクライマックスに向かいます。

以上が『装甲騎兵ボトムズ』の紹介でした。
次回はOVA編をご紹介します。

 

よく知らない人に向けた『装甲騎兵ボトムズ』への誘い テレビ編
リアルロボットの金字塔、『機動戦士ガンダム』。もはや世代を越えた大人気シリーズとなっていて、時代を越えて新作が作り続けられています。そんな『ガンダムシリーズ』と同じくらいに有名な作品『装甲騎兵ボトムズ』という作品を聞いた事がある人もいると思います。今回はよく聞くけど、よくは知らないという人に向け、『装甲騎兵ボトムズ』という作品について紹介したいと思います

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