『機動戦士ガンダム』の監督で有名な富野由悠季さん。ガンダム以外でもいろんなロボットアニメを世に送り出していて、富野監督がいなければ『リアルロボット』というジャンルは生まれませんでした。そんな富野監督ですが、アニメファン界隈では、『皆殺しの富野』と呼ばれていたりします。この異名はこれまで監督が作り上げてきた作品内で、多数登場するキャラクターたちが最終回、もしくはその付近になるとどんどんと非業の死を遂げていってしまう事からついたものです。全ての作品がそうではありませんし、特に近年になってからはその傾向もなくなりました。しかし、そう呼ばれてしまう事になった作品では、物によってはトラウマレベルの物もあります。今回はその『皆殺しの富野』と呼ばれる原因となったいわゆる『鬱エンド』となった作品を紹介します。
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『無敵超人ザンボット3』
1977年に全23話で放映された作品。ガンダムより前の作品でいわゆるスーパーロボット物。主人公たちは純粋な地球人ではなく、『ガイゾック』という勢力の追撃から逃れ、放浪の末に地球にたどり着き、日本に住みついたビアル星人の末裔という設定です。で、この作品は物語の前半から、主人公たちガイゾックとの戦いで、建物が破壊されたり住民が被害を被り、主人公たちが地球にガイゾックを「連れてきた」元凶であると誤解され、地球人に迫害されるという、それまでのロボット物ではありえない鬱な展開です。物語中盤になってくると、その誤解もとかれ始めるのですが、ガイゾックが生け捕りにした地球人の体に時限爆弾を埋め込み、記憶を消した上で解放、街中で無差別に爆発させる『人間爆弾』という作戦を展開するのですが、この『人間爆弾』にそれまでに登場していた主要人物、主人公と親しいキャラクターもさせられてしまい、例外なく爆死します。私は『ザンボット3』を子供の時、リアルタイムで見ていたので、やばいくらい衝撃を受けました。それまで主人公の取り巻きは、絶対死なないというお決まりがアニメにはあると思いこんでいた時期だったので、『え?死んじゃうの?』と子供ながら思ったものです。
そしてさらに最終回になると、主人公の勝平以外のほとんどのキャラクターが死んでしまいます。ザンボット3は3機が合体するロボットなのですが、最後の戦いで勝平の乗る1号機の『ザンボエース』を切り離した2号機、3号機は、主要キャラクターであるパイロットをのせたまま、敵に特攻して爆砕します。ガンダムでも有名となった大気圏突入も、『ザンボット3』の最終回で再現されていて、勝平の兄・一朗太は勝平を守るために燃え尽きています。挙げ句の果てにガイゾックは平和のためにビアル星人を含む悪意に満ちた生物を滅ぼすことを目的とし、同じく危険な地球人を滅ぼすために飛来したという事が明らかになり、まさに鬱となるラストを迎えます。その後番組となり同じく富野監督作品である『無敵鋼人ダイターン3』はうって変わって明るい作品となっています。
『伝説巨神イデオン』
1980年に全39話でテレビ放映された作品。テレビ版では打ち切りになっていまうものの、その後ファンからの声によりテレビ版をまとめた『接触篇』、そして打ち切りで描かれなかった真のラストを描かれた『発動篇』が同時に映画化もした作品で、本ブログでも過去に一度紹介しています。
ざっくり言ってしまうと全滅エンドとなる作品。終盤ではなく、割と速い段階から登場人物たちが死んでいきます。イデオンの乗組員の一人になったかと思ったら次の回で死んだり、メインの戦闘員ではなくて、ただのおばちゃんが機銃撃つのを協力していたら死んだり、そしてテレビ版のラストは、まさに打ち切りらしく、とあるヒロインが敵の施設から脱出して、みんなとようやく合流といったタイミングで、イデが発動して、両陣営全滅。裸となった魂が宇宙を飛んで終わったりと、割と強めなアクセントが全編に渡ってまかれています。
打ち切りになったラストをしっかりと作り直すという事で、みんなが期待していた劇場版では、一人一人が死んでいく様を丁寧に描いただけで、大筋はなにも変わりませんでした。割とヒロインポジションの女性が顔面を撃たれたり、ガンダムでいうカツ・レツ・キッカポジションの子供の首が飛んだり、もうやりたい放題で、最終的に地球もバッフ・クランも滅亡して終わり、テレビ版のラストと同様に魂となったキャラたちが裸で、語らいそして宇宙を飛ぶという耐性がないとかなりの衝撃を受ける作品となっています。主人公含む全員が死んでしまうこのラストは、まさに『皆殺しの富野』の代表作品かと思います。
『聖戦士ダンバイン』
1983年に全43話で放映された作品。その前番組で好評だった『戦闘メカ ザブングル』が非常に明るいコメディタッチで描かれていたのに対し、富野監督らしいシリアスなストーリーが展開されます。この作品についても本ブログでも過去に一度紹介しています。
ざっくり言ってしまうとイデオンに続く全滅エンドとなる作品です。主人公含むほとんどの登場人物が死んでしまいます。最終決戦が進むにつれ、主人公ショウの母艦であるゼラーナの仲間たちが一人、また一人、敵のキャラクターもどんどん死んでいき、ショウの恋人であるマーベルも、そして最後は主人公であるショウも宿敵のバーンと刺し違える形で死んでしまいます。私は今でもこの作品がすごく好きなのですが、ラストだけは未だにどうにかして欲しかったですねえ。毎週放映を楽しみにしていた当時小学生だった私は、その最終回にすごくショックを受けました。その頃はまだ『イデオン』も未視聴だったのでロボット物の主人公で、最後に死んでしまうバッドエンドは、それまでありませんでした。最後はミ・フェラリオ(妖精のような女の子)のチャムのみ生存。ただ、物語のラストにはそうしなければ、ならない理由もあるので、しょうがないといえば、しょうがないのですが・・・それでも、最後だけなんとかなってほしかったですね。
『機動戦士Ζガンダム』
1985年に全50話で放映された超有名作品。2005年に映画化もされましたが、そっちよりもテレビ版の方が鬱エンドなので、今回はテレビ版をチョイス。これまでの作品同様に、敵味方関係なく両陣営の主要キャラクターがどんどん死んで行きます。敵であるティターンズだけではなく、主人公サイドの仲間たちもどんどん死んでいきます。エマさん、ヘンケン艦長、レコアさん、前作から登場していたカツ・レツ・キッカのカツも死んでしまいます。ブライトさんやハマーンは次の作品でも登場するのと、シャアは特別扱いだったので行方不明にはなるものの、死にはしませんでした。ただ毎回出てきてはやられていたジェリドも結局死ぬんかい!って感じで主人公のカミーユに殺されてしまいます。そしてなによりテレビ版は、主人公のカミーユがラスボスのシロッコと刺し違えたあと、精神崩壊してエンディングを迎えます。このラストがあったので続編の『ZZ』に繋がるのですが、1作品の主人公、しかもガンダムでもこんなラストにしてしまう富野監督を当時恐れたものです。
『機動戦士Vガンダム』
1993年に全51話で放映された作品。この作品は主人公のウッソは無事です。無事ですがこの作品はいつもの最終決戦でも多く人が死ぬのですが、割と前半の段階からも、主要人物が登場しては死んでいきます。『Vガンダム』にはシュラク隊という女性だけで編成された部隊が十数人でてくるのですが、登場してから毎週一人ずつ死にます。その死に方も結構エグい感じで、身動きとれない状態でビームサーベルにコクピットを焼かれたり、爆弾を解除していて失敗して爆死するなど。シュラク隊として最初から出ていて、終盤の戦いまで生き残るコニーも、最終戦の時に命を落とします。他にもシュラク隊の隊長だったオリファーが貴重なV2ガンダムのコアファイターで戦艦の特攻して死んだり、ウッソのお母さんが死んだ時に、首が中に残ったままのヘルメットをウッソが抱いてたり、最終戦にいたってはやっつけのように人がどんどん死んで行きます。そして物語の諸悪の根源で、常に憎むべき対象でカテジナに関しては生存しますが、戦争終結後に全ての立場を失い視力と記憶もほとんどない状態でヒロインのシャクティと再会しますが、ほぼ廃人のような状態となっていました。本作に出てくる『V2ガンダム』が宇宙世紀最強モビルスーツと言われているんで、度々注目されている作品ですが、その内容はかなり鬱な内容となっています。
以上が『皆殺しの富野』の『鬱エンド』作品を紹介でした。鬱ではあるものの、それぞれの作品には、独特の魅力があり、私はどの作品も大好きです。『鬱エンド』に耐性がある人でまだ未視聴のものがあるのであれば、是非『みてください!(シャクティ風)』。
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